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東山二条 七八《京都国立近代美術館、京都岡崎周辺の素敵なお店》

2013 年 4 月 30 日 4,125 views One Comment

良いものを少しずつ
素材のうまみを後押しする繊細な手仕事


京都・二条通沿いにある日本料理のお店、「七八(ななはち)」。風にはためく暖簾に印された店名は、番地から名前を取ったというユニークさ。「七も八も縁起の良い数字なので、気に入っているんです」と話してくださったのは、店主の馬場健詞さん。2011年4月に先代からお店を引き継がれて以降、全てのお料理を1人で丹念に作られているのだとか。カウンター9席のみの店内は、予約でいっぱいになってしまうこともしばしば。お店のある岡崎は、京都国立近代美術館・京都市美術館・細見美術館がひしめくアートスポットなだけに、「平安神宮や美術館帰りの方が立ち寄ってくださることも多いんです」と馬場さん。全国から観光客と食通が通う京都のなかでもひときわ人気のお店とあらば、ぜひ予約してでも訪れたいですね。

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さて、すべすべとした白木のカウンターごしに中をのぞいてみると、厨房には真剣な眼差しで食材と向かい合う馬場さんの姿が。魚を焼き上げる頃合から、盛り付けの微妙な角度まで、神経を研ぎ澄ました手仕事に職人の気骨が伝わります。料理の道に進まれる前から、趣味で器を集められていたという馬場さん。趣ある器に品よく装われていくお料理に、こちらの心持ちまでピンと伸びるようです。

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日本料理の真髄を極めた出汁とお米で
器に咲いた春をいただく


お昼のおすすめは、お造り・小鉢・焼き物・煮物が揃った「一汁三菜」(1870円)。まず運ばれてきたお盆には、湯気を立てる白米と粟麩のお汁物、お造りの3品が並びます。漆黒のお茶碗にひとすくい装われたお米は、朝と夕方の2回精米し、お客さんの予約に合わせて土鍋で炊き上げたもの。「同じ品種でも、甘いものがあったり、すっきりしていたり、農家さんによって全然味が違うんです」との理由で、異なる農家から“丹後のコシヒカリ”を取り寄せているのだとか。選び抜いたお米をブレンドすることによって、バランスの取れた独自の味わいが完成しています。2杯目のおかわりでは、カリッとしたおこげを。普段は無意識に食べてしまうお米の味が、じわっと口に広がる驚きがあります。

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そして、この日のお造りは、とろりとした大和芋のたたきをまとった「ケンケン鰹」。網ですくい上げることで鰹へのストレスが軽減される和歌山県の漁法、“ケンケン漁”で水揚げされた鰹です。活け締め・血抜きを行い、短時間で市場まで運ばれるため、鮮度も抜群なのだとか。そっと添えられた生海苔の磯の香りと、穂紫蘇がさわやかです。

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続いて登場した小鉢は、京都らしく湯葉を、出汁のきいた土佐しょうゆで。心地よい舌当たりに、ツンとした新鮮なわさびが間違いのない美味しさです。唐津焼の長皿に乗るのは、3月後半から5月頭に旬をむかえる「桜鱒の木の芽焼き」。鱒専用の“ゆあんじ(出汁)”に漬け込み、白米に合うよう少し濃い目に味付けしているのだそう。香り高い木の芽が、脂ののった身にやさしい刺激を加えています。煮物は、こちらも旬の「朝掘り筍」。産地としても名の知れた京都・塚原で採れたものを浅く煮込み、明石のわかめ、シャリッとした独特の食感のウドと合わせています。筍本来の風味をそこなわないよう、最低限の調味料で仕上げてあるので、香りも歯ごたえもしっかりと楽しめるところにさすがの技を感じます。

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お昼には、こちらの「一汁三菜」に先付けとデザートが付いたコースも。また、お酒と一緒に舌鼓を打つなら、夜に頂ける6~8品のコースもおすすめです。日本酒を中心としたお酒の中には、国産にこだわったワインも。「国内でワインを作られている方は、日本料理に合うものを作ってくださっているんです」と馬場さん。お料理はもちろんのこと、脇を固める器や飲み物にも、抜かりのない心配りを行き届かせているのです。


美しい所作と厨房が物語る
「食材勝負」の舞台裏


「食材勝負なんです。良いものを仕入れたら、僕はもう何もする必要ないと思ってるんです」と、馬場さん。毎朝、錦市場へと仕入れに出かけるのはもちろんのこと、万一、そこで良い食材が見つからない場合は、お店をお休みすることもあるのだとか。さらに、新鮮でさえあれば良いというのではなく、例えば照り焼きなども美味しいマカジキなら、9日ほど寝かせた方が旨みが出るのだとか。「色とかではなく、実際に自分で食べてみて、一番美味しいと見極めた時にお出ししています」。素材の味を邪魔せず、食材にそっと手を添えるような調理が、「七八」の魅力なのです。
元々、飲食店のアルバイトで厨房に立たれていたという馬場さん。その後、東京の中華料理店で働きながら夜間の調理師学校に通われ、日本料理の道へ進まれたのだそう。「どのお店も個性的でおもしろいのですが、日本料理を作られている方の仕事の仕方がとにかくすばらしくて、美しかったんです」。「七八」の厨房は、きっちりと整頓され、ピカピカに磨かれた調理用具が並びます。新しいお店には保守的な土地柄のうえ、日本料理の軒数も多い京都では、開業当初、市場でもなかなか仕入れができないなど、苦労が尽きなかったのだとか。だからこそ食材と一層真剣に向かい合い、妥協のないお料理を作られ続けてきたことが、研ぎ澄まされた手の動きや厨房から伝わります。美術館の帰り道、京都らしく日本料理をいただきたいとき、暖簾をくぐれば、一層特別な1日にしてくれそうなとっておきのお店です。

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取材・文:國廣愛佳


7807東山二条 七八
住所:京都府左京区岡崎徳成町7番8 Google Map
(京都市バス「東山二条」より徒歩すぐ)
電話:075-771-7168
営業時間:昼/12:00~14:00(なくなり次第終了)
     夜/18:00~21:00(入店)
定休日:不定休(基本的に月曜定休、仕入れ・予約状況により例外あり)
席数:カウンター9席
駐車場:なし

京都国立近代美術館で現在開催中の展覧会は『皇室の名品 -近代日本美術の粋-』
細見美術館で現在開催中の展覧会は『開館15周年記念特別展Ⅲ・琳派展ⅩⅤ 琳派の伝統とモダン ― 神坂雪佳と江戸琳派 ―』


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One Comment »

  • camus said:

    この記事を拝読してからずーっと行きたいと思っていて1年経ち、やっと京都国立近代美術館の後、夜にお邪魔できました。案内くださっていたとおりその日も予約客のみというお断りがお店の前に出されていました。全て美味しかったですが、やはり印象的だったのはピカピカ、艶々のごはんです。おかわりにはおこげを入れてくださっていましたし、改めてこの記事を確認して共鳴しました。いつも素敵なお店のご紹介をありがとうございます。

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