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Articles in the 小平信行 Category

小平信行, 展覧会レビュー, 関東 »

[2012 年 4 月 27 日 | No Comment | 3,316 views]
青銅器文明と「倣古(ほうこ)」《悠久の美 ―唐物茶陶から青銅器まで  レビュー》

それにしてもなぜここまで文様で覆い尽くすのだろうか。虎や蛇、フクロウといった実在の動物から龍や鳳凰などの想像上の動物、それに唐草文様や幾何学的な図形まで見るものをたじろがせるような文様の洪水だ。中には器の形がふくろうや怪獣の顔になってしまったものもある。今から3000年近く前、日本ではまだ縄文時代だった頃の古代中国では、精緻で奇妙な文様に彩られた青銅器文明が栄えていた。

青銅器は主に豪族など地域の支配者の墓などから発掘されたものが多かったため酒や肉などの神への捧げものを入れる器として作られていたらしい。神々への供物を守ってもらうために、わざと恐ろしげな文様を青銅器に刻んだのではないかとも言われている。

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[2012 年 3 月 29 日 | No Comment | 7,484 views]
「混沌の中の秩序」カオス的絵画の魅力《ジャクソン・ポロック展  レビュー》

カオスという言葉を広辞苑でひくと2つの意味が書かれている。「宇宙誕生の前の混沌とした状態」ともう一つ「初期条件のわずかな差が長時間後に大きな差となってあらわれ、予測ができない現象」である。

カオスという言葉を私たちはよく「混沌」とか「無秩序」という意味で使うが、そこにはもう少し深い意味、すなわち「一見混沌とした状態に見えても、その先には秩序が予想される」あるいは「ミクロな視点で見ると無秩序であるが、長い時間をかけて観察するとそこには秩序が存在する」という意味もこめられているのだ。

今、東京国立近代美術館でアメリカの20世紀抽象絵画の巨匠ジャクソン・ポロック展が開かれている。生誕100年にあたる今年開催されているこの展覧会はアクション・ペインティングの様式で知られるジャクソン・ポロックの日本で初めての大規模な回顧展だ。

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[2012 年 2 月 28 日 | No Comment | 6,318 views]

「九相図」という絵がある。人間が死んで腐敗し骨へと変ずるさまを九つの段階に描いたものだ。日本にはこの「九相図」なるものが鎌倉時代以降多数描かれている。人間の体が死後どのように変容していくのかという様相を描いた絵。そこにはいったいどのような意味が込められているのだろうか。一説によれば、出家した僧侶が肉体への執着を絶つため、死をイメージすることがねらいで描かれたものだという。人間の死をリアルに、しかもおぞましく描き出すことが目的なのである。

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[2011 年 9 月 28 日 | No Comment | 2,754 views]
内に秘めた美《グェッリーノ・トラモンティ展  レビュー》

焼き物と付き合い始めて10年以上がたつ。最近、私は粘土を使って様々な形を作る際、外側よりもむしろ内側に何か大切なものがひそんでいるのではないかと思うようになった。

たたらと呼ばれる粘土の板を組みあせて作る場合でも、粘土の紐を積み重ねていく場合でもそうだが、形が出来てくると最後は口をどう作るのかを考えなければならなくなる。特に花器やオブジェなど口をどう付けるかで作品全体のイメージが大きく異なってくる。大きく開けるのか小さくするのか、形は丸なのか四角なのかなどそれは様々だ。口のつけ方一つで作品全体のイメージが決まるのは、口はその形態の内側と外側をつなげる非常に重要な部分だからだ。

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[2011 年 8 月 29 日 | 2 Comments | 3,200 views]
明王からのメッセージ 《空海と密教美術展  レビュー》

昔から人々に「お不動さま」と呼ばれ親しまれてきたお寺が私の家のすぐ近くにある。密集した住宅地の真ん中、ここだけは緑が多く都会のオアシスだ。元旦などは大勢の初詣の人でにぎわうが、普段は訪れる人は少なく境内は静まりかえっている。長い石の階段を上ったところにご本尊が安置された本堂がある。まだ子供だった頃、薄暗い本堂の奥を覗いたことがある。本堂の奥に黒々としたシルエットが見えた。ご本尊の不動明王だ。近づいてよくみると実に不気味だ。鬼のように怒った顔、手には剣や鎖をもち、両目をかっと見開き何かを凝視している。背景には燃え上がる炎のような形もみえる。あたりが薄暗くなる夕暮れ時などはその不気味さはいっそうつのった。家に帰り何故あんなに怖い顔をしているのか両親に聞くと、いつも決まって「悪いことをした人間をしかりつけているのよ」という答えが返ってきた。

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[2011 年 7 月 28 日 | No Comment | 3,274 views]
日本的感性と印象派 《ワシントン・ナショナル・ギャラリー展  レビュー》

新古今和歌集の中に平安時代の歌人、藤原長家の次のような和歌がある。
花の色にあまぎる霞たちまよひ空さへにほふ山桜哉

霞がかかった山の斜面に山桜が咲いている。「あまぎる」とは「天霧る」という動詞で、空一面がけむっている様子だ。満開の桜の花のにおいがあたり一面にただよい、霞で空も山も区別がつかない。やわらかな光に全てが包まれたような、いかにも日本的な春爛漫の光景だ。

美学・フランス思想史が専門の佐々木健一氏はこうした和歌の分析を通じて、日本人の感性に迫ろうとしている。そもそも感性とは「対象の性質を知覚しつつ、私の中でその反響を倍音として聴く働きである」。(佐々木健一著 「日本的感性」)と定義されるが、長家の歌は日本的感性を強く感じさせる歌の一つだというのだ。

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[2011 年 6 月 28 日 | No Comment | 2,712 views]
真の報道写真とは 《ジョセフ・クーデルカ プラハ1968  レビュー》

あらためて歴史を紐解くと1968年という年は現代史において特に多くの出来事があったことがわかる。日本国内では東大紛争が激しさを増し、海外に目を向ければアメリカによるベトナムへの介入など国家と国家の衝突で様々な悲劇が生まれた。報道写真の世界でも忘れることができない作品は多い。ベトナム戦争の従軍カメラマンがとらえた戦火に巻き込まれた民衆の姿や、銃殺刑に処せられる兵士の姿など、戦争の悲惨さと、人間の隠された魔性を見せつけた。

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