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Articles in the 関東 Category

小平信行, 展覧会レビュー, 関東 »

[2013 年 4 月 30 日 | No Comment | 2,045 views]
日曜写真家の創造力 《マリオ・ジャコメッリ 写真展 レビュー》

日曜画家ならぬ日曜写真家と呼ばれる人がいる。土曜と日曜に写真をとり、その晩に現像や焼きつけなどの暗室作業をして写真を制作する人たちのことだ。

イタリアの北部の街セニッガリアに生まれ、主に日常の身の回りのものを撮影し続けた写真家マリオ・ジャコメッリ。日曜画家が週末に絵筆をふるうように、ジャコメッリもまた週末にカメラを持って街で撮影し、日曜の夜、暗室で自分のイメージを印画紙に焼き付けるいわば日曜写真家だったと言われているのだ。 (続きを読む…)

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[2013 年 2 月 28 日 | No Comment | 2,038 views]
キャパが戦争写真家になったわけ 《ロバート・キャパ/ゲルダ・タロー  二人の写真家 レビュー》

ここに2枚の写真がある。写っているのは談笑する男女の兵士。公園のベンチだろうかつかの間の平和の穏やかなひと時の様子が伝わってくる。不思議なのはこのシーンをとらえた2枚の写真がほとんど同じ角度から同じ瞬間をとらえているにもかかわらず、実は別の人物が撮影しているというのだ。撮影したのはあの有名な報道写真家ロバート・キャパと、一時期キャパと行動を共にしていた女性カメラマンのゲルダ・タローだ。

横浜美術館では2013年3月24日(日)までロバート・キャパの生誕100年を記念して写真展『ロバート・キャパ/ゲルダ・タロー 二人の写真家』が開かれている。

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[2012 年 12 月 28 日 | No Comment | 2,998 views]
黒い人影は誰なのか  《生誕100年 松本竣介展  レビュー》

自分の部屋に飾りたいと思う絵はそう簡単に見つかるものではない。うれしい時も悲しい時も毎日向き合うことを考えると 絵の題材はもちろん色合いや全体の雰囲気など慎重になってしまうものだ。

しかしそんな思いが吹っ切れたような思いにさせられる絵に出会った。都会のどこにでもありそうな光景を描いた静けさのただよう一枚の風景画だ。

その絵のタイトルは《Y市の橋》。運河の上にかかる橋、ちょっと特別な形をした橋の欄干、橋の向こうには石づくりの大きな建物。あたりは静寂に満ちている。どこか遠い異国の街にさまよいこんだような不思議な魅力に満ちている。

この絵の魅力を一層引き立てるのは、ぽつんと橋の上に一人たたずむ「黒い人影」だ。シルクハットの帽子らしきものをかぶり、どこか遠いところを眺めているような後姿の男のシルエット。「黒い人影」は小さいが不思議な存在感がある。

絵の作者は大正から昭和にかけて日本の洋画界に足跡を残した松本竣介だ。子供のころ聴覚を失い、わずか36歳で世を去った夭折の画家 松本竣介の風景画は「音のない風景画」とも言われているほど静けさに満ちている。 (続きを読む…)

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[2012 年 10 月 30 日 | No Comment | 3,062 views]
風景画が語る人と自然 《メトロポリタン美術館展  レビュー》

風景画というジャンルの絵画が成立したのはいったいいつ頃だったのであろうか。中国における山水画を風景画とすれば、8世紀の中ごろ、唐の時代にはすでに多くの名作が描かれていた。山水画の技法は朝鮮や日本にも影響を及ぼし、風景画の一つのジャンルとして確立されていたのだ。

山水画の世界で印象的なのは、単なる自然の光景だけでなく、人間の生活もまた小さくではあるが、描かれていることが多いことだ。家畜を連れて歩く農夫の姿や、湖で漁をする漁民、雪道を旅する人々・・。そびえる山や悠然と流れる大河など圧倒的な自然の大きさに対して、人の姿はよほど目を凝らして注目しないと見過ごしてしまうほど小さい。

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[2012 年 9 月 28 日 | No Comment | 3,026 views]
静けさの秘密 《シャルダン展  レビュー》

多くの場合、画家は光線の具合や季節によって変化する対象に感動し、同じモチーフを繰り返し描く。モネの睡蓮、セザンヌのサント・ヴィクトワール山など数えあげたらきりがない。繰り返し同じモチーフを描くこと。そこには自然の移りゆく変化と同時に画家の心境なども織り込まれ、時に見る者に美を感じさせるのである。

そんなあたり前のように思ってきたことが、実はそう単純ではないことに気づかされる展覧会に出会った。今、東京で開かれているフランス18世紀の画家シャルダンの絵画38点で構成された「静寂の巨匠」展だ。

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[2012 年 7 月 30 日 | No Comment | 2,647 views]
《真珠の耳飾りの少女》との対話 《マウリッツハイス美術館展  レビュー》

かつて小学校の校長室には必ずといっていいほど歴代校長の顔の絵、すなわち肖像画が壁にかけられていた。私が通っていた小学校は明治の創立だから初代の校長は和服姿、ほとんど白黒の肖像画だ。天井近くの高いところの壁にずらりと並んだ歴代校長の顔に見下ろされると、あらたまった気持ちになり、少々緊張したものだ。

人々は婚約や結婚、子供の誕生、名誉ある称号をもらった記念などに画家に肖像画を描かせた。画家の前で正装し、かしこまった姿を画家に描かせる。中にはかわいい子供の肖像画もあるが、肖像画のほとんどは富や名誉を誇示したものが多い。

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[2012 年 5 月 29 日 | No Comment | 2,486 views]
閾(いき)の美学 《ジョルジュ・ルオー 名画の謎  レビュー》

月を見るために特別に設計された「月見台」を持つ桂離宮。中秋の名月に行われる様々な行事。月に自らの心を重ねるなど、日本人は古来、月に特別な想いを寄せてきた。月を描いた絵画や工芸品も多いが、私にとって忘れられない一枚がある。

江戸中期に活躍した絵師 円山応挙が描いた《秋月雪峡図》と題された屏風絵だ。横3.5メートルをこえる六曲一双の2組の屏風に描かれているのは一面の雪景色。その中に小さく一軒の家があり、雪の積もった岩山を背景にして、松が雪の重みでしなっている。右側の屏風絵には小川が流れ、遠くには雑木林が靄にかすんでいる。雑木林の向こうに今にも沈みそうな月が小さく描かれ、この雪景色は早朝であることを思わせる。白昼の月によって、夜が明け、昼へと移り変わる時の経過を見事に表現しているのだ。

時代も国もまったく異なるが、ルオーの風景画もまた月が印象的だ。今、汐留ミュージアムで開かれている『ジョルジュ・ルオー 名画の謎』展ではルオーの初期から晩年にいたる版画や油彩画などの代表作およそ100点を見ることができる。

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