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Articles in the 展覧会レビュー Category

小平信行, 展覧会レビュー, 関東 »

[2013 年 11 月 30 日 | No Comment | 2,022 views]
師を超えて 《モローとルオー レビュー》

黒くて太い線、シンプルな構図、そして絵の具が盛り上がったような強烈な筆遣い。キリストの受難を描いても宗教的な雰囲気をあまり感じさせず、道化師や裁判官を描いた絵も静けさに満ちている。わかりやすくてどこか心が落ち着く。そんなルオーの絵に昔から惹かれていた。

ルオーについてはこれまで何度も展覧会に足を運び、油彩画や版画を眺めてきた。しかしルオーが19世紀象徴主義の画家モローの愛弟子だったいうことは、今回始めて知った。

モローが国立美術学校で教鞭をとっていたのは1892年以降、亡くなるまでのおよそ6年間。モローのもとで学んでいたマティスやマルケなど20世紀を代表する画家の中でルオーはモローの最も信頼の厚い生徒だったという。ルオーはどのようにモローの教えを受け、あの独特の作風を確立していったのだろうか。

そんな疑問に答えてくれる展覧会『モローとルオー・聖なるものの継承と変容』が東京のパナソニック 汐留ミュージアムで2013年12月10日まで開かれている(12月20日からは松本市美術館へ巡回)。パリにあるギュスターブ・モロー美術館所蔵のモローの作品を中心に、ルオーの絵と合わせておよそ70点をテーマごとに6つのコーナーで紹介している。単に二人の絵を展示するのではなく、モローの絵がどのようにルオーの絵へと継承し変容していったのかを暗示する展示が際立つユニークな展覧会だ。 (続きを読む…)

上田祥悟, 展覧会レビュー, 関西 »

[2013 年 10 月 31 日 | No Comment | 2,913 views]
枯淡の美 《朱漆「根来」—中世に咲いた華 レビュー》

16世紀の後半、キリスト教の布教のために日本を訪れていたルイス・フロイスをはじめとするイエズス会宣教師たちは、自らが見聞きした日本国内の様子を逐一記録し、報告書にまとめて本国へと送付していた。その中では当時、仏教への信仰が特に強かった紀伊国(紀州)についても触れられており、特に高野山、粉河寺、根来寺、雑賀衆などの宗派に関しては高い経済力と軍事力を背景にした地域自治を成立させていたことから、それぞれが1つの共和国のような存在であると報告されていた。このような記述は豊臣秀吉による紀州攻めにより、一山のほとんどが焼け落ちてしまった根来寺のかつての繁栄の様子を伝える貴重な資料となっている。室町時代末期の最盛期には数百もの坊舎と約一万人の僧兵(根来衆)を擁していたとされる根来寺では、膨大な数に及ぶ日用品の需要がその一帯での自給自足による生産活動を活発にしていた。現在も広く知られている根来の漆器は、そういった山内の状況のもとで育まれた産品の1つであった。

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上田祥悟, 展覧会レビュー, 関西 »

[2013 年 9 月 30 日 | No Comment | 4,083 views]
描くように縫う 《絹糸で描いた刺繍絵画の世界 レビュー》

昨年末にイギリスのアシュモレアン美術館で日本の刺繍を扱った展覧会が開催された。《 Threads of Silk and Gold 》と題された会場内に展示されていたのは、明治時代に製作された絹糸の刺繍による絵画作品であった。「刺繍絵画」と呼ばれるそれらの作品は、その多くが欧米の住宅に飾ることを目的に作られた輸出品であったため、日本で作られていたにもかかわらず、その存在はあまり知られていない。明治時代の他の工芸品と同じく高度な職人技によって生み出された刺繍絵画は、万国博覧会などを契機として欧米の王侯貴族の間で広く知られるようになり、多くの作品が彼らの邸宅に納められた。また海外市場を見据えていた刺繍絵画には、和洋折衷的な作品や伝統技法を駆使した写実的な表現などの独特な要素が見られた。 (続きを読む…)

小平信行, 展覧会レビュー, 関東 »

[2013 年 9 月 30 日 | No Comment | 2,801 views]
肖像画に込められた物語 《プーシキン美術館展 フランス絵画300年 レビュー》

安土桃山時代の絵師、長谷川等伯の生涯を描いた小説「等伯」のなかに肖像画を描くシーンがある。等伯といえばあの《松林図屏風》が有名だが、実は出世作となる絵画は肖像画だった。京都へ絵師になるために上京したての頃、等伯の腕を見込んで頼まれたのが、本法寺の日堯上人の肖像画だ。

30歳そこそこにもかかわらず、不治の病に侵され明日をも知れない命だという日堯上人は、すでに悟りをひらき、寺に居ながらにして遠くのものを見、感じる能力を持っていたという。当時、信長が起こした比叡山焼き撃ちで無残にも死んでいった多くの者の苦しみや悲しみを受け止め、成仏させようと祈り続けるうちに病に侵された上人から、死ぬ前に「尊像」を描いてほしいと頼まれたのだ。「尊像」とはただの肖像画ではない。後の修業僧のために描かれるもので、描かれた絵を見てどこまで悟が進んでいるのかわかるものでなければならない。 (続きを読む…)

上田祥悟, 展覧会レビュー, 関西 »

[2013 年 8 月 28 日 | No Comment | 2,094 views]
遊びをせんとや生まれけむ 《特別展観  遊び レビュー》

遊びをせんとや生まれけむ、戯れせんとや生まれけん、遊ぶ子どもの声聞けば、わが身さへこそ動がるれ。平安時代後期、後白河法皇の編纂とされる今様歌謡集「梁塵秘抄」の一節として知られるこの歌は、昨年放送されたNHKの大河ドラマ「平清盛」でもメインテーマとして扱われ、話題となった。この歌の解釈には諸説あり、わが身を遊女とみて自身の罪業の深さを悔根した歌とするものもあるが、「平清盛」の劇中では子どもが遊ぶように夢中で生きたいという意に捉え、栄華を極めた清盛の生き様を象徴する歌として登場していた。何れの解釈にせよ、無心に遊んでいる子供の声を聞いた大人達が自身の心身を揺さぶられるほどの衝動に駆られた点は共通している。

今年の夏、京都国立博物館では「遊び」にテーマを置いた特別展観が7月13日から8月25日まで開催されていた。夏休み期間中の開催ということもあって、会場には本展のワークシートを手にした家族連れの姿も見受けられた。また「平清盛」で崇徳院役を演じた井浦新氏を交えつつ展覧会の見どころを紹介するトークイベントなども開催され、人気を博していた。展示会場は全9章で構成されており、時代もジャンルも様々な美術・工芸品、約130点の中に表現された「遊び」の姿を鑑賞することができた。 (続きを読む…)

佐々木玄太郎, 展覧会レビュー, 関西 »

[2013 年 8 月 28 日 | No Comment | 2,653 views]
実物のリアリティと象徴性《武器をアートに―モザンビークにおける平和構築 レビュー》

「彼らは剣を打ち直して鋤とし、槍を打ち直して鎌とする。国は国に向かって剣を上げず、もはや戦うことを学ばない」(「イザヤ書」2章4節)

アフリカ南東部に位置するモザンビークは1975年にポルトガルから独立した。しかし、その翌年から政権政党と反政府組織の間で内戦が始まり、この戦争は1992年に和平協定が結ばれるまで17年間にわたって続いた。92年に内戦は終結したものの、戦いによって生じた住民同士の間の亀裂は容易に解消されはしない。また民間には大量の武器が残されており、内戦終結後もいつ再び戦争が始まるかわからない、と危惧されていた。

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佐々木玄太郎, 展覧会レビュー, 関西 »

[2013 年 7 月 29 日 | No Comment | 3,681 views]
エヴァから入る日本刀の世界《ヱヴァンゲリヲンと日本刀展 レビュー》

本展「ヱヴァンゲリヲンと日本刀」はその名の通り、アニメ(及びマンガや小説でも展開する)「エヴァンゲリオン」と日本刀のコラボレーション企画である。本展で公開されるのはまず一つには、現代の日本刀製作者たちが手がけた、「エヴァンゲリオン」の中に登場する武器を再現した作品である。エヴァ弐号機のプログレッシブナイフや「エヴァンゲリオンANIMA」に登場する「マゴロクソード」や「ビゼンオサフネ」、さらには「ロンギヌスの槍」といった武器の数々が、人間がそれらを手にしたときにちょうど劇中でエヴァが使用したときと同じサイズに見えるような寸法で再現されている。またこの他、「エヴァンゲリオン」の世界からインスピレーションを得て、エヴァの機体や登場人物などをテーマにして意匠を凝らした作品も出品されている。

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