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Articles in the 展覧会レビュー Category

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[2014 年 8 月 2 日 | No Comment | 4,163 views]
異国へ通じる橋 《江戸の異国万華鏡―更紗・びいどろ・阿蘭陀 レビュー》

日本とオランダの交流は、慶長5年(1600)にオランダの帆船リーフデ号が豊後国(現在の大分県)に漂着したのに始まる。当時、国内においてはポルトガルやスペインといったカトリック教国との交易が既に行われていた。徳川家康による江戸幕府の成立と、それ以降に敷かれた鎖国体制によって、それらの国々との関係は絶たれることになるが、
オランダとの通商は長崎県の平戸において継続された。江戸時代における交易の花形とも言える両国の通商関係は200年以上にわたり、日本国内に世界各地の文物をもたらす重要な窓口となった。滋賀県のMIHO MUSEUMでは、そのような江戸時代における日蘭交流の中で伝来した更紗やびいどろ、阿蘭陀などに焦点を当てた展覧会が2014年6月8日まで開催されていた。

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[2014 年 8 月 2 日 | No Comment | 3,618 views]
近代美人画の誕生 《恋する美人画-女性像に秘められた世界とは レビュー》

美人画は古今東西を問わずさまざまな文化に存在してきた。特に日本では、江戸時代において浮世絵を中心に大きく発達した。当時は「美人写し」や「美人競い」、「女絵」とも呼ばれていた。広辞苑において美人画は、「女性の美を強調して描いた絵」と定められている。ここに見られる女性の美という表現は、外見的な美しさだけに留まらない、より広い意味合いを含んでいる。京都市美術館において、2014年5月11日まで開催されていた『恋する美人画-女性像に秘められた世界とは』では、同館が所蔵する近代京都画壇のコレクションを中心に、明治時代以降京都の地で展開した美人画の諸相に焦点を当てた展示が行われていた。

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上田祥悟, 展覧会レビュー, 関西 »

[2014 年 3 月 31 日 | No Comment | 1,451 views]
身近に観る名品Ⅱ 《開館60周年特別展ー序章ー レビュー》

今月、大阪市阿倍野区に日本一の超高層ビルとなるあべのハルカスがオープンした。ビルの外観デザインは国立国際美術館や大阪歴史博物館を手掛けたことで大阪に馴染みのあるシーザー・ペリ氏が監修している。私自身はまだ足を運べていないが、16階には美術館もあるそうで、現在は開館記念展として『東大寺展』が開催されている。もっと現代的な展示が行われると個人的には思っていたので、この『東大寺展』は少し意外であった。

大阪の新たな拠点となったあべのハルカス美術館で開館記念展示が行われている一方、今年で開館60周年を迎える藤田美術館においても、記念となる特別展が行われている。その内容は、同館が誇る収蔵品の中から特に選りすぐられた東洋古美術の名品を、春と秋の2回に分けて展示するというものである。現在開催中の春期展では世に名高い《曜変天目茶碗》や《玄奘三蔵絵》などの国宝2点を含む絵画、彫刻、工芸、書の作品28点が出品されており、それら1点1点をじっくりと鑑賞できる空間が用意されている。

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小平信行, 展覧会レビュー, 関東 »

[2014 年 3 月 31 日 | No Comment | 2,165 views]
アートの境界線《イメージの力―国立民族学博物館コレクションにさぐる レビュー》

それは仮面や家具、神像など骨董品がずらりと並ぶ薄暗い店の奥にかかっていた。荒い生地の黄色く変色した古びた布。よく見ると布には奇妙な文様が施されている。単純な文様ながら、おもちゃ箱をひっくりかえしたような不思議な造形。矢印が伸び、その途中が枝分かれしたような形、またたく星のような丸い文様、どこか大柄な太った人とやせた人が群れを作って歩いているような形など、どれ一つをとってみても様々なイメージがわいてくる。かつて陶磁器の茶器や皿などに面白半分でその形をデザインとして刻んだことがあった。文様を刻むと単調な形の器が妙に異国情緒漂う不思議な雰囲気を醸し出していたことを今でもはっきり覚えている。

その布とはコンゴ民主共和国のクバ族の女性が儀礼の際に身に着けるヤシの葉の繊維で作った布地で、荒い目のある布地に施された文様は、実は穴のあいた部分をふさぐ目的でつけられたものだ。後に人々は穴の有無とは関係なく、不思議な形のアップリケを施し身につけ祭礼にのぞみ、後にはファッションとして楽しんだのだという。 (続きを読む…)

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[2014 年 2 月 28 日 | No Comment | 1,526 views]
粋と雅と 《蒔絵の文台・硯・料紙箱 レビュー》

1890年(明治23年)に成立した帝室技芸員の制度は、皇室による庇護のもと、優れた美術・工芸作家の制作活動を奨励することを目的として設けられた。この制度は戦後、内閣府と宮内省の改変によって廃止されたが、それまでに日本画、洋画、彫刻、金工、染織、七宝、陶工、漆工、篆刻、建築、写真の各分野から計79名が認定された。そのリストを見てみると、昨年大規模展が行われた竹内栖鳳をはじめ、近代の名立たる作家達が任命されていることが分かる。彼らは古式にならった皇室向けの作品に加え、当時国を挙げて取り組んでいた万国博覧会へ出品するための作品制作も依頼されていた。このような作家の顕彰制度が果たした役割は、やがて現在の文化勲章や重要無形文化財制度、日本芸術院会員などへと引き継がれてゆくことになった。

現在、京都市東山区の清水三年坂美術館では5月18日(日)までの間、漆工の分野において帝室技芸員に任命された作家達による蒔絵作品を中心した特別展が開催されている。蒔絵とは漆で絵や文様を描いた上に金属粉や色粉を蒔くことで定着させる、日本の代表的な漆工加飾技法である。今回の展覧会では硯箱と、それとセットで作られることの多かった文台や料紙箱という比較的大型の漆工品に焦点が当てられており、柴田是真をはじめとする帝室技芸員が手掛けた華麗な、あるいは粋な加飾の世界を鑑賞することができる。 (続きを読む…)

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[2014 年 2 月 28 日 | No Comment | 2,078 views]
使う器から見る器へ《隠﨑隆一 事に仕えて レビュー》

展覧会場に入ってまず目につくのが《ZOI》というタイトルがついた作品だ。高さは1メートル近くあり、黒く細いくねった管が蛇の首のように立ちあがった形が印象的だ。果たしてこれは器なのか、オブジェなのか。タイトルからは想像できないが、よく見ると上部に口があり、花器という見方もできる。

《備前三足花器》は黒い焼き締めの高さ30センチあまりの小ぶりの作品だが、手を腰にあててあたかもダンスをする女性のようだ。同名の5個組の作品は5人の太ったおばさんが会話をしているようにもみえる。これらの作品は用を離れ、造形性に富んだあたかも「見る器」のようでもある。

備前焼の伝統を背負いつつ、新しい造形を追求する陶芸家、隠崎隆一の個展が2014年3月30日(日)まで、東京の菊池寛実記念 智美術館で開かれている。智美術館は独特の展示方法で主に焼きものを展示するユニークな美術館だ。特に照明には凝っており、大きな薄暗い空間に並べられた作品は、一点一点が陰影を生み出し、独特の展示風景を作り出している。冒頭にも紹介した高さが1メートル近い今回の個展の目玉作品ともいえる《ZOI》や、《ファランクス》と名付けられたオブジェなどが、広大な展示室にスポット照明で並んだ光景はどこか空想の世界に連れていかれたかのようだ。 (続きを読む…)

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[2013 年 12 月 27 日 | No Comment | 1,688 views]
余白の美学《ターナー展 レビュー》

中国の南宋時代の宮廷画家 梁楷(りょうかい)が描いた水墨画に《雪景山水図》というのがある。大きな雪山が画面一杯に描かれている。山のふもとには蛇行する川が描かれ、河畔には雪をかぶった木、その前を驢馬に乗った小さな人物。雪山の大きさに比べてなんと人間の小さいことか。それでも雪原を行く驢馬と人物は実に印象深い。画面のほとんどは山の斜面でなにも描かれていないように見えるが、実はこの広大な余白が大きな意味を持っている。人間の存在の小ささと自然の大きさとを見事にこの余白が語っているのだ。

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