Articles in the 佐々木玄太郎 Category
佐々木玄太郎, 展覧会レビュー, 関西 »

「彼らは剣を打ち直して鋤とし、槍を打ち直して鎌とする。国は国に向かって剣を上げず、もはや戦うことを学ばない」(「イザヤ書」2章4節)
アフリカ南東部に位置するモザンビークは1975年にポルトガルから独立した。しかし、その翌年から政権政党と反政府組織の間で内戦が始まり、この戦争は1992年に和平協定が結ばれるまで17年間にわたって続いた。92年に内戦は終結したものの、戦いによって生じた住民同士の間の亀裂は容易に解消されはしない。また民間には大量の武器が残されており、内戦終結後もいつ再び戦争が始まるかわからない、と危惧されていた。
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本展「ヱヴァンゲリヲンと日本刀」はその名の通り、アニメ(及びマンガや小説でも展開する)「エヴァンゲリオン」と日本刀のコラボレーション企画である。本展で公開されるのはまず一つには、現代の日本刀製作者たちが手がけた、「エヴァンゲリオン」の中に登場する武器を再現した作品である。エヴァ弐号機のプログレッシブナイフや「エヴァンゲリオンANIMA」に登場する「マゴロクソード」や「ビゼンオサフネ」、さらには「ロンギヌスの槍」といった武器の数々が、人間がそれらを手にしたときにちょうど劇中でエヴァが使用したときと同じサイズに見えるような寸法で再現されている。またこの他、「エヴァンゲリオン」の世界からインスピレーションを得て、エヴァの機体や登場人物などをテーマにして意匠を凝らした作品も出品されている。
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國府理の車への思い入れは、本人の趣味はもちろん、世代によるものも大きいのだろう。國府が育ったのはスーパーカーが流行した時代であり、國府は小学校時代には友達に頼まれてそれらのイラストを描いていたという。現在の國府作品の支持層も意外とそのスーパーカーに熱狂した世代に多かったりするのかもしれない。もっともそのように車に思い入れのある人でなくても、多くの人は彼の作品を目の前にしたら理屈抜きに心が躍ることだろう。プロペラの回転によって進む自転車や自動車、巨大な帆を張って風力で走る車といった「KOKUFUMOBIL」と呼ばれる乗り物群は、まるでSFの世界の乗り物が実物大の模型として再現されたかのようだ。そしてKOKUFUMOBILのおもしろいのは、それらの多くは見かけ倒しではなく実際にその機能を果たすところだ。國府の想像力によって生み出されたそれらの見た目はSF的ともいうべきものだが、それらは確かに実現可能な「ありえる」ものなのだ。そしてそれらが実際に動いているのを目にしたとき、見る者の心にはまた新たな世界のイメージが浮かんでくる。この空想とリアリティーの独特な混交は國府作品の大きな特徴の一つである。 (続きを読む…)
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どの美術館にも自慢の所蔵作品というものがあり、それらは多くの観客の目に触れるべく大抵その館の常設展で公開されている。しかしながら企画展に足を運ぶ人は多くても、常設展については一般の観客の関心は薄く、所蔵作品の知名度も高くないというのがほとんどの館の現状であろう。質の高いコレクションが存在しながら、それらが十分目を向けられていないとすればそれはひどくもったいないことだ。しかし、一つの館の所蔵作品だけでは常設展の展示替えをしたとしても見せ方が限られていて、観客の目を引きつけるような新鮮な展示を行うのは難しいのも事実である。展示構成によって作品同士を有機的に結びつけ魅力を引き出して見せるのがキュレーターの仕事とはいえ、いかんせん一つの館の中だけではそのコマ自体が非常に限られている。どうにかして、館の所蔵品の魅力を効果的に伝え、より多くの観客にそれらへの親しみをもってもらうことはできないだろうか?『美の響演 関西コレクションズ』の企画の背景となったのは、そのような問題意識である。 (続きを読む…)
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私たちはジャンル分けが大好きだ。何事も何らかのジャンルに分類せずにはいられない。料理なら和食、洋食、中華、音楽ならポップにロックにクラシック、映画ならアクション、コメディ、ホラー、サスペンス…といった具合に。美術なら大きくは伝統美術と現代美術に分けられ、あるいはメディア別に絵画、彫刻、写真、映像、インスタレーションなどに細かく分類することも可能だ。また、工芸やデザインといったものをファインアートと別のジャンルとして考えるのも常識的感覚といえるだろう。このように一生懸命分類しようとするのは、そうして整理することはその物事の理解を容易にし、価値の判断もずっと楽にしてくれるからだ。ジャンルは物事にある程度の価値判断の基準を与えてくれる。ジャンル分けはその物事が置かれる文脈を決定し、その物事は該当ジャンル内の原理に沿って、理解され判断されることになる。 (続きを読む…)
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ロベール•ドアノーはフランスを代表する写真家で、とりわけそのパリを舞台とした写真でよく知られている。例えば、市庁舎前を行きかう人々の間でキスを交わす恋人同士を写した《パリ市庁舎前のキス》は、ほとんどの人が一度は目にしたことがある作品だろう。美術館「えき」KYOTOで2013年2月24日まで開催されていた『生誕100年記念写真展 ロベール・ドアノー レビュー』展はそのドアノーの生誕100年を記念して開催された回顧展である。
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中国の現代アートと聞いて多くの人が思い浮かべるのは、「ポリティカル・ポップ」や「シニカル・リアリズム」といった、中国の政治や社会の状況を反映した作品だろうか。あるいは、過激なまでの生々しさをもったパフォーマンスを連想する人もいるかもしれない。これら強烈な印象を残す作品は世界の注目を集め、中国現代アートブームを巻き起こした。だが福岡アジア美術館で2013年2月24日(日)まで開催中の『渓山清遠―中国現代アート・伝統からの再出発』展はそれらとは方向性を大きく異にし、山水画を主とする伝統絵画を学び、そこから自らの表現を作り上げていこうとする作家たちを取り上げ、それを中国現代アートの新たな潮流として提示する。
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