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Articles in the 上田祥悟 Category

上田祥悟, 展覧会レビュー, 関西 »

[2012 年 2 月 28 日 | No Comment | 3,621 views]
大器晩成 《ホノルル美術館所蔵 北斎展 レビュー》

2010年は浮世絵師葛飾北斎の生誕250周年記念の年であった。北斎の誕生日にあたる同年10月31日には、検索エンジンの大手であるGoogleのトップページのロゴが、北斎の代表作《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》をアレンジしたデザインとなっていて印象的であった。

19世紀の後半にヨーロッパで始まるジャポニズム運動の発端になったのが、フランスの版画家が目にした《北斎漫画》であったという話はよく知られている。その《北斎漫画》の作者であり、当時の西洋美術に大きな影響を与えた日本美術の代表格である北斎に対する関心は、国内外を問わず今なお高い。1998年にアメリカの「Life」誌が企画した「この1000年間に偉大な業績をあげた世界の人物100人」では、北斎が日本人として唯一人選出されているほどである。また日本に先駆けて浮世絵の蒐集・研究が行われていた欧米諸国には、幕末から明治時代にかけて海を渡った良質の浮世絵が数多く点在している。

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[2011 年 12 月 28 日 | No Comment | 2,613 views]
アート・パトロネージ 《華麗なる京蒔絵 -三井家と象彦漆器- レビュー》

江戸時代の後期、京都の蓮光寺に白象の背で胡座する普賢菩薩(ふげんぼさつ)を描いた蒔絵額が奉納された。その見事な出来栄えは都中の評判になり、人々はその蒔絵額の作者である西村彦兵衛の「彦」と彼の屋号であった象牙屋の「象」をとって「象彦の額」と呼び讃えた。これが現在も京都にある高級漆器の老舗、「象彦」の名の由来とされている。

象彦といえば、特に関西圏では漆器専門店としてよく知られており、象彦漆器は日常的に使うものからハレの日のものまで、多くの家庭に普及している。また京都という土地柄もあって、歴代の象彦は宮中や上層階級の御用も勤めてきた。そんな象彦漆器だが、幕末から明治維新へと移り変わる激動の時代には存続の危機に晒されたこともあった。それまで高級漆器の主要な注文主であった大名は没落し、残された富豪層も天皇の東京行幸に伴って東京へと居を移していった。加えて、生活様式の西洋化による漆器そのものに対する国内需要の低下もこの事態に拍車をかけた。その結果、多くの職人が離散し、代々続いた有名な塗師屋や蒔絵師も姿を消した。蒔絵の施された漆器を焼いて、残った金を取ることを業としていた者がいたと言われるのもこの時代である。

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[2011 年 11 月 29 日 | No Comment | 3,156 views]
古都を彩る《第63回 正倉院展 レビュー》

奈良時代から平安時代にかけて、各地の役所や南都七大寺などの大寺院には財物や什宝類を収納するための正倉(正税を収める倉)が設けられた。この倉と、その周辺の塀や垣で囲われた一画を「正倉院」と呼んでいた。現在、正倉院は東大寺のもののみが残っているため、これを指して固有名詞的に使われている。毎年秋になると、正倉院の宝庫に納められていた宝物の点検・調査が行われ、その時期に合わせて正倉院展が開催される。よく知られているように、宝物類の中心は聖武天皇のご遺愛品である。その中には8世紀頃にアジア諸国で製作され、遠く日本へと伝来したものも含まれており、東大寺正倉院がシルクロードの東の終点と呼ばれる由縁となっている。 (続きを読む…)

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[2011 年 9 月 28 日 | No Comment | 2,368 views]

奈良県奈良市の大和文華館は近畿日本鉄道(近鉄)の創立50周年を記念して建てられた、東洋古美術を幅広く網羅する美術館である。1960年の開館からさらに50周年目となる2010年に館はリニューアルオープンを行った。それに関連する記念展示が期間ごとに内容を変えながら、今年の秋まで開催されている。今回取り上げる『漆工展』はその3期目にあたり、大和文華館所蔵の漆工品を中心にした計85点を一堂に集めたものとなっている。日本を始め、中国・韓国・タイといった様々な国の漆工品を扱っている点が見所である。

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[2011 年 8 月 29 日 | No Comment | 2,902 views]
じきじきに注文します《古染付に遊ぶ-日本人が愛した中国明末の青花磁器 レビュー》

中国江西省の景徳鎮と言えば陶磁器の産地として広く知られている。景徳鎮での陶磁器生産は漢の時代に既に始まっていたとされている。その後、元の時代に誕生した《青花》と呼ばれる磁器によって、それまで地方の窯の1つであった景徳鎮は磁器の都として一躍有名になっていった。《青花》とは白磁にコバルト顔料で青い文様や絵を描いた磁器のことである。欧米では単刀直入に《Blue and White》と呼び、日本では《染付》と呼ぶが、後者はコバルトの青が織物の藍染を思わせたことに由来すると言われている。大阪市立東洋陶磁美術館で8月28日まで開催されていた展覧会では、染付の中でも明の時代の末に景徳鎮で作られ、日本に輸入された《古染付》の品々を鑑賞することができた。

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[2011 年 7 月 28 日 | No Comment | 2,593 views]
テーマセレクター 《細見美術館アートキャンパス2011 – 鎌倉・室町・桃山 – レビュー》

祇園祭の真っ最中ということもあり、京都市内はどこも浴衣姿の人々で賑わっていた。この時期に合わせて細見美術館では《祇園祭礼図屏風》が期間限定で展示されている。企画展とは関係なくチラシにも載っていないシークレット展示だが、こういった演出はとてもうれしい。毎年行っていることなのかどうかを聞きそびれてしまったので、次に行く機会にでも確認したい。それはさておき、特別展の方に眼を向けてみたい。今回の展覧会場は大きく3つに分かれており、鎌倉・室町・桃山の美術工芸品を各時代ごとに厳選されたテーマに沿って鑑賞する構成となっている。

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[2011 年 6 月 28 日 | No Comment | 2,971 views]
日本研究とコレクション 《ハンブルク浮世絵コレクション展 レビュー》

1860年秋、オイレンブルク伯爵率いるプロイセンの東方アジア遠征団が江戸湾に来航した。翌61年1月に江戸幕府とプロイセンとの間に修好通商条約が締結され、ここに日本とドイツの国交が樹立した。今年2011年はそれから数えて150年目となり、日独両国で様々な記念行事が行われている。京都市上京区の相国寺承天閣美術館で開催中の『ハンブルク浮世絵コレクション展』もその1つである。

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