Articles in the 上田祥悟 Category
上田祥悟, 展覧会レビュー, 関西 »

日本書紀の推古21年(613年)の条に「自難波至京置大道」とある。これは日本最古の官道に関する記述として知られ、そのルートは現在の国道166号と同じく、大阪の難波から二上山の南側を抜け、奈良の飛鳥京へ至るというものであった。飛鳥時代にはこの官道を通じてさまざまな物資が運ばれ、また遣隋使や留学僧が往来して大陸の文化を都へともたらし、飛鳥文化の発展に大きな役割を果たした。二上山の東麓に位置する當麻寺は、7世紀の創建以来、そういった交通の要衝として栄えながら、やがて極楽浄土信仰の聖地として人々からの深い帰依を集めていった。 (続きを読む…)
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アメリカで最も歴史のある美術館の1つに数えられるボストン美術館が所有する日本美術のコレクションは、およそ10万点にものぼる。この世界的にも貴重なコレクションの礎を築いたのはエドワード・S・モース、アーネスト・フェノロサ、ウィリアム・スタージス・ビゲローら、日本美術をこよなく愛した3人のボストニアンであった。明治維新以降、日本中が一丸となって近代化・西洋化を押し進めていく中で、3人の元には様々な経緯で手放された美術品が集められた。後にボストン美術館へ寄贈されることになるそれらの作品の中には、日本の美術史上欠かすことのできない作品も多く含まれていた。 (続きを読む…)
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広大な国土に多様な民族が共存してきた中国では、古来より様々な地域で育まれた文化が集まり、互いに影響しあいながら融合していくことで、多彩で包容性のある中国文明へと発展してきた。このことは中国を流れる全ての川が、やがては海に行き着くことに喩えられる。
神戸市立博物館で4月7日まで開催されている『中国 王朝の至宝』展では、中国最古の王朝と言われる「夏」の時代から「宋」の時代に至るおよそ3000年の間に制作され、現存している多種多様な文化財、約170点が展示されている。この展覧会は、昨年の10月から12月にかけて東京国立博物館で行われていたものの関西版である。展示構成は時代順に全6章からなり、近年の発掘成果として2008年に南京市で発見された黄金の仏塔《阿育王塔》も特別展示されている。 (続きを読む…)
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今年で開館15周年を迎える細見美術館では、同館所蔵の優品を扱った記念特別展が企画・開催されている。 2013年3月10日(日)まで開催されている第1弾となる展示では江戸時代の美術・工芸を代表する琳派の画家達と江戸時代における奇想の画家の1人である伊藤若冲にスポットが当てられている。画風は大きく違えど、ともに動植物を好んで描き、装飾性の強い作風で知られる両者の作品約60点が前期と後期に分かれて展示されている。 (続きを読む…)
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昨年の4月に始まり、一年をかけて日本各地を巡回してきた『フィンランドのくらしとデザイン展』の最後を飾る展示が兵庫県立美術館で開催されている。フィンランドに関連した展覧会としては日本初となる大規模展であり、会場では美術、建築、デザインといった各分野において近現代のフィンランドを代表する作品、約350点が展示されている。本邦初公開となる作品の中には「ムーミン」の作者として知られるトーヴェ・ヤンソンの貴重な油彩画なども含まれており、見どころの1つになっている。
また今回の展覧会で貸し出ししている音声案内のナレーターには、テレビアニメ「楽しいムーミン一家」でムーミン役を務めた高山みなみさんが抜擢されている。通常の作品解説の合間に突然ムーミンがしゃべり出すという演出は、なかなか新鮮であった。 (続きを読む…)