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Articles in the 上田祥悟 Category

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[2014 年 8 月 2 日 | No Comment | 24,145 views]
異国へ通じる橋 《江戸の異国万華鏡―更紗・びいどろ・阿蘭陀 レビュー》

日本とオランダの交流は、慶長5年(1600)にオランダの帆船リーフデ号が豊後国(現在の大分県)に漂着したのに始まる。当時、国内においてはポルトガルやスペインといったカトリック教国との交易が既に行われていた。徳川家康による江戸幕府の成立と、それ以降に敷かれた鎖国体制によって、それらの国々との関係は絶たれることになるが、
オランダとの通商は長崎県の平戸において継続された。江戸時代における交易の花形とも言える両国の通商関係は200年以上にわたり、日本国内に世界各地の文物をもたらす重要な窓口となった。滋賀県のMIHO MUSEUMでは、そのような江戸時代における日蘭交流の中で伝来した更紗やびいどろ、阿蘭陀などに焦点を当てた展覧会が2014年6月8日まで開催されていた。

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[2014 年 8 月 2 日 | No Comment | 23,342 views]
近代美人画の誕生 《恋する美人画-女性像に秘められた世界とは レビュー》

美人画は古今東西を問わずさまざまな文化に存在してきた。特に日本では、江戸時代において浮世絵を中心に大きく発達した。当時は「美人写し」や「美人競い」、「女絵」とも呼ばれていた。広辞苑において美人画は、「女性の美を強調して描いた絵」と定められている。ここに見られる女性の美という表現は、外見的な美しさだけに留まらない、より広い意味合いを含んでいる。京都市美術館において、2014年5月11日まで開催されていた『恋する美人画-女性像に秘められた世界とは』では、同館が所蔵する近代京都画壇のコレクションを中心に、明治時代以降京都の地で展開した美人画の諸相に焦点を当てた展示が行われていた。

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[2014 年 3 月 31 日 | No Comment | 3,203 views]
身近に観る名品Ⅱ 《開館60周年特別展ー序章ー レビュー》

今月、大阪市阿倍野区に日本一の超高層ビルとなるあべのハルカスがオープンした。ビルの外観デザインは国立国際美術館や大阪歴史博物館を手掛けたことで大阪に馴染みのあるシーザー・ペリ氏が監修している。私自身はまだ足を運べていないが、16階には美術館もあるそうで、現在は開館記念展として『東大寺展』が開催されている。もっと現代的な展示が行われると個人的には思っていたので、この『東大寺展』は少し意外であった。

大阪の新たな拠点となったあべのハルカス美術館で開館記念展示が行われている一方、今年で開館60周年を迎える藤田美術館においても、記念となる特別展が行われている。その内容は、同館が誇る収蔵品の中から特に選りすぐられた東洋古美術の名品を、春と秋の2回に分けて展示するというものである。現在開催中の春期展では世に名高い《曜変天目茶碗》や《玄奘三蔵絵》などの国宝2点を含む絵画、彫刻、工芸、書の作品28点が出品されており、それら1点1点をじっくりと鑑賞できる空間が用意されている。

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[2014 年 2 月 28 日 | No Comment | 3,623 views]
粋と雅と 《蒔絵の文台・硯・料紙箱 レビュー》

1890年(明治23年)に成立した帝室技芸員の制度は、皇室による庇護のもと、優れた美術・工芸作家の制作活動を奨励することを目的として設けられた。この制度は戦後、内閣府と宮内省の改変によって廃止されたが、それまでに日本画、洋画、彫刻、金工、染織、七宝、陶工、漆工、篆刻、建築、写真の各分野から計79名が認定された。そのリストを見てみると、昨年大規模展が行われた竹内栖鳳をはじめ、近代の名立たる作家達が任命されていることが分かる。彼らは古式にならった皇室向けの作品に加え、当時国を挙げて取り組んでいた万国博覧会へ出品するための作品制作も依頼されていた。このような作家の顕彰制度が果たした役割は、やがて現在の文化勲章や重要無形文化財制度、日本芸術院会員などへと引き継がれてゆくことになった。

現在、京都市東山区の清水三年坂美術館では5月18日(日)までの間、漆工の分野において帝室技芸員に任命された作家達による蒔絵作品を中心した特別展が開催されている。蒔絵とは漆で絵や文様を描いた上に金属粉や色粉を蒔くことで定着させる、日本の代表的な漆工加飾技法である。今回の展覧会では硯箱と、それとセットで作られることの多かった文台や料紙箱という比較的大型の漆工品に焦点が当てられており、柴田是真をはじめとする帝室技芸員が手掛けた華麗な、あるいは粋な加飾の世界を鑑賞することができる。 (続きを読む…)

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[2013 年 10 月 31 日 | No Comment | 3,886 views]
枯淡の美 《朱漆「根来」—中世に咲いた華 レビュー》

16世紀の後半、キリスト教の布教のために日本を訪れていたルイス・フロイスをはじめとするイエズス会宣教師たちは、自らが見聞きした日本国内の様子を逐一記録し、報告書にまとめて本国へと送付していた。その中では当時、仏教への信仰が特に強かった紀伊国(紀州)についても触れられており、特に高野山、粉河寺、根来寺、雑賀衆などの宗派に関しては高い経済力と軍事力を背景にした地域自治を成立させていたことから、それぞれが1つの共和国のような存在であると報告されていた。このような記述は豊臣秀吉による紀州攻めにより、一山のほとんどが焼け落ちてしまった根来寺のかつての繁栄の様子を伝える貴重な資料となっている。室町時代末期の最盛期には数百もの坊舎と約一万人の僧兵(根来衆)を擁していたとされる根来寺では、膨大な数に及ぶ日用品の需要がその一帯での自給自足による生産活動を活発にしていた。現在も広く知られている根来の漆器は、そういった山内の状況のもとで育まれた産品の1つであった。

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[2013 年 9 月 30 日 | No Comment | 5,357 views]
描くように縫う 《絹糸で描いた刺繍絵画の世界 レビュー》

昨年末にイギリスのアシュモレアン美術館で日本の刺繍を扱った展覧会が開催された。《 Threads of Silk and Gold 》と題された会場内に展示されていたのは、明治時代に製作された絹糸の刺繍による絵画作品であった。「刺繍絵画」と呼ばれるそれらの作品は、その多くが欧米の住宅に飾ることを目的に作られた輸出品であったため、日本で作られていたにもかかわらず、その存在はあまり知られていない。明治時代の他の工芸品と同じく高度な職人技によって生み出された刺繍絵画は、万国博覧会などを契機として欧米の王侯貴族の間で広く知られるようになり、多くの作品が彼らの邸宅に納められた。また海外市場を見据えていた刺繍絵画には、和洋折衷的な作品や伝統技法を駆使した写実的な表現などの独特な要素が見られた。 (続きを読む…)

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[2013 年 8 月 28 日 | No Comment | 2,991 views]
遊びをせんとや生まれけむ 《特別展観  遊び レビュー》

遊びをせんとや生まれけむ、戯れせんとや生まれけん、遊ぶ子どもの声聞けば、わが身さへこそ動がるれ。平安時代後期、後白河法皇の編纂とされる今様歌謡集「梁塵秘抄」の一節として知られるこの歌は、昨年放送されたNHKの大河ドラマ「平清盛」でもメインテーマとして扱われ、話題となった。この歌の解釈には諸説あり、わが身を遊女とみて自身の罪業の深さを悔根した歌とするものもあるが、「平清盛」の劇中では子どもが遊ぶように夢中で生きたいという意に捉え、栄華を極めた清盛の生き様を象徴する歌として登場していた。何れの解釈にせよ、無心に遊んでいる子供の声を聞いた大人達が自身の心身を揺さぶられるほどの衝動に駆られた点は共通している。

今年の夏、京都国立博物館では「遊び」にテーマを置いた特別展観が7月13日から8月25日まで開催されていた。夏休み期間中の開催ということもあって、会場には本展のワークシートを手にした家族連れの姿も見受けられた。また「平清盛」で崇徳院役を演じた井浦新氏を交えつつ展覧会の見どころを紹介するトークイベントなども開催され、人気を博していた。展示会場は全9章で構成されており、時代もジャンルも様々な美術・工芸品、約130点の中に表現された「遊び」の姿を鑑賞することができた。 (続きを読む…)