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Articles in the きよさわみちこ Category

きよさわみちこ, 展覧会レビュー, 関西 »

[2011 年 1 月 27 日 | No Comment | 2,043 views]
「もうひとつの現実」への気づき《山荘美学 :日高理恵子とさわひらき レビュー》

ひんやりとした山道を登り、冬枯れの静かな庭園を通り抜けると、木々に囲まれて佇む木組みの美しい洋館に辿り着く。京都のアサヒビール大山崎山荘美術館では展覧会『山荘美学 :日高理恵子とさわひらき』が開催中だ。

大正から昭和初期にかけ、実業家の加賀正太郎によって建てられた英国風の山荘である本館には、さわひらきの映像作品が、同館コレクションである河井寛次郎を初めとする民藝運動の作家達による作品や古陶磁などと共に、そして安藤忠雄設計による新館には、日高理恵子の絵画作品が同じく同館コレクションのクロード・モネの絵画作品と共に展示されている。英国風山荘という、いわゆる「ホワイトキューブ」ではない特殊な空間に、古代から近代にかけての品々と共に展示された現代の2作家による作品たちは、鑑賞者にどんな世界を見せてくれるのだろうか。


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[2010 年 9 月 28 日 | No Comment | 1,948 views]
「見えないこと/見えないもの」から見えてくるもの《兵庫県立美術館 2010年度コレクション展Ⅱ レビュー》

私たちは普段の生活の中で、視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚の五感によって対象を認識している。そして、その中で最も大きな割合を占めているのが視覚であることは、五感のうちどれかひとつが失われたときの不自由さ/怖さを想像しても明らかだろう。対象に近接する必要のある触覚や嗅覚、味覚、あるいは対象認識の手がかりとしては部分的で不安定な聴覚などに比べて、一定の距離を保ちながら、すなわち自身の安全を確保しながら最も効率よく即座に対象を把握できる視覚は、周囲の世界を客体化し、自身の主体性・自律性を高めようとしてきた人間の長い歴史の中で特権化されてきたという見方もある。

美術もまた、「見えること/見ること」を前提とする「視覚芸術」として続いてきた。サウンドアートやパフォーマンスなどメディアが多様化する現代においても、やはり私たちの誰もが何よりもまず「見えること/見ること」を無意識のうちに期待してしまう。私たちは事実として、驚くほど視覚情報に信頼を置き、そして頼っているのだ。

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[2010 年 5 月 28 日 | No Comment | 2,451 views]
否定形から生まれるもの《死なないための葬送─荒川修作初期作品展 レビュー》

「美術/アート」とはなんであるか?「アート」と呼ばれるものの形態が多様化している現在、この問いに「それはOOである」という簡潔な答えを出すことは、誰にとっても難しい。その一方で「〈アート〉という、まとまったひとつのフィールドが存在する」という認識は、暗黙の了解として共有されてもいる。明確な定義づけはできないのに、その存在が既成概念として保証されているという状態は、ともすれば、その存在の成り立ちや意味が省みられることなく「なんとなくそれっぽい」ものが量産され、「アート」を似た者同士の、閉鎖的で生ぬるい集合体のようにしてしまう危険性も孕んでいる。このような状況に陥らないためにも、「アートとは?」という問いについて改めて考えようとするとき、「既存のアートの枠組みにとらわれることなく活動する/した」と評価される人物の活動を見てみることで、「アート」の輪郭を外側から浮き上がらせることができるかもしれない。
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[2010 年 1 月 28 日 | No Comment | 2,965 views]
「具象的な絵画」からの問いかけ《絵画の庭 ─ ゼロ年代日本の地平から展 レビュー》

今月16日より、国立国際美術館で始まった『絵画の庭 – ゼロ年代日本の地平から』は、2000年代最初の10年間=「ゼロ年代」における日本の具象的な絵画の動向に焦点を当てた展覧会である。今年81歳となる草間彌生、そして奈良美智など50年代後半〜60年代生まれの「先行世代」から80年代生まれの「ゼロ世代」まで、28名のアーティストが参加している。会場は作家ごとに展示スペースが仕切られ、さながら28の個展がずらっと同時開催されているかのようだ。展示全体のボリュームもさることながら、部屋ごとに現れる表現の、とりあえずは「具象的」としか括ることができないほどの多様さにも目を見張るものがある。

しかし、そもそも「具象的」とは、どういうことだろうか?「具象」というのは、私たちが手を触れられる、ある具体的な物体の目に見える姿のことである。つまり、「具象的な絵画」とは、何らかの具体的な事物がモチーフとして描かれた絵画のことを言い、そして、具象的な絵画には、そこに描かれたモチーフをきっかけとして見る者に様々な意味や物語を連想させるという性質がある。こうしたことを踏まえて、もう一度、この展覧会の「具象的な絵画」を見ていくと、それらが一体どのように多様なのかということ、そしてその多様性の奥深さが見えてくる。
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